名古屋商法の特徴

名古屋商法という言葉がありますが、その特徴を調べてみると、@質素、A堅実、B義理堅い(地縁・血縁が重視される)、C地味だが物作りに優れている、などと書いてあります。手堅いと言われる名古屋の会社ですが、なぜ、そこまで手堅いかといえば、市場規模の問題があります。市場規模が一番大きいのは首都である東京で、日本の約4割の規模を有します。次は、大阪で約2割。名古屋は1割です。なので、新商品の拡販はまず東京でと考えることになります。大阪と東京の違いは、東京は「いかに新しいか」を問われ、大阪では「いかに値引きしたか」が問われます。その後で、やっと売り手は名古屋に目を向けるようになります。売り手が、東京、大阪を経て、それから名古屋を狙うために発生するほんのわずかな時間差、そこに「成功ばかりではなく失敗例もあるはずだ」という疑念が生まれます。この疑念こそ、名古屋人をより慎重たらしめ、名古屋人特有の手堅さの起源になっています。

タダ文化

名古屋弁では、「お値打ち」(「お得」の意味)という言葉がよく使われますが、実際、名古屋にはお値打ちサービスがあふれています。さらに、名古屋人は、「お値打ち」よりもさらに進化して、「タダ」の魅惑にとりつかれつつあるのではないかと思います。名古屋には、工場見学、企業博物館なども多く、観光でもタダとめぐり会える機会も多いです。 ミツカンという企業が愛知県半田市にありますが、タダ同然の酒かすからお酢の製造方法を発明し、大量で安価な供給を可能にしました。実は、江戸時代に江戸前寿司をはやらせた裏の立役者はミツカンなのです。江戸前寿司は、酢の抗菌効果で長持ちし、片手で手軽に食べられる江戸時代のファーストフードとなりました。

他にも名古屋名物の手羽先にも同じような話があります。この手羽先ですが、ほとんど食べるところなどありません。手羽先とは、ニワトリの羽の先っぽの部位であり、お肉が極めて少ないのです。昔は、もっぱらスープのダシに使われていたそうです。ところが、コショウや塩などの味付けをして、カリッと揚げればおつまみになります。商品として価値のなかったニワトリの部位、捨てられても仕方ないはずの物が、1個100円くらいで飛ぶように売れ、ついに名古屋名物にまで育ててしまう。これも、名古屋の文化の1つなのではないでしょうか。安く仕入れて高く売ると言いますが、タダで仕入れて高く売ると言えるのではないでしょうか。